モーターサイクル・ダイアリーズ

ラテンアメリカの英雄、エルネスト・チェ・ゲバラは、アルゼンチンの比較的裕福な中産階級の家庭に生まれ、医者を志していたが、23才の時、友人アルベルト・グラナードと共にバイクによる行きあたりばったり南米大陸縦断旅行の計画を立てる。この壮大かつとてつもなく貧乏臭い旅行の中で目にしたラテン・アメリカの現実が、夢見がちな精神を持った青年エルネスト・ゲバラ・デ・ラ・セルナがコマンダンテチェ・ゲバラへと変貌してゆくきっかけとなったと言われている。

ゲバラとグラナード、それぞれにこの旅行の記録を残しており、この映画はそうした記録を元にしたロード・ムービーである。インディオの女性と結婚してインディオ党を作ろうなどと青臭い夢を語るグラナードに、銃無しではラテンアメリカの現実は何もかわらない、と語る激しい気性と、弱者への細やかなやさしさが同居する若いゲバラを丁寧に描いた好感の持てる作品。

製作総指揮にロバート・レッドフォード、監督にブラジル出身のウォルター・サレス、脚本にプエルト・リコ出身のホセ・リベーラ、ゲバラ役にメキシコのガエル・ガルシア・ベルナル、グラナード役にアルゼンチンのロドリゴ・デ・ラ・セルナ、など。アメリカ人のレッドフォードがキューバの英雄を主人公にした映画を製作する、ということには、ちょっと驚いた方がいいかもしれない。

原作は『チェ・ゲバラ モーターサイクル南米旅行日記』のタイトルで現代企画室から出ていたが、映画化のタイミングで『モーターサイクル・ダイアリーズ』として文庫化されている。なお、二人が乗ったボデローサ二号は行程の半分にも到達できず、スクラップになってしまうのだが。